予備校講師「このホームレスみたいになりたくなかったらしっかり勉強するんだぞ!」
1:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 21:54:53.128 :GPM9aQXT0.net
― 予備校 ―
講師「今日はなにを食べたんです?」
ホームレス「うへへ……ゴミ箱からあさったコンビニ弁当……」
講師「なんという惨めさだ……」
講師「いいか! このホームレスみたくなりたくなかったらしっかり勉強するんだぞ!」
講師「しっかり勉強して、いい大学に入れないと、こうなってしまうんだぞ!」
講師「それが嫌なら、遊ばず怠けず計画的に勉強して、志望大合格をもぎ取るんだ!」
ホームレス「へっへっへ……」
ザワザワ…
5:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 21:58:18.860 :GPM9aQXT0.net
講師「ほら、1000円だ」
ホームレス「毎度」
講師「これをやると、どんなにたるんでる生徒も一発で気を引き締める。いつも助かるよ」
講師「しかしあんた、よくこんな仕事を引き受けてくれたもんだ」
講師「ホームレスってのは、あれで案外プライドが高いもんだと思ってたが」
ホームレス「生徒たちを勉強させたいっていう、お前さんの熱意に動かされただけさ」
講師「熱意か。そんな上等なもんが俺にあるかな」
講師「俺にあるのは、とにかく生徒の成績を上げて、志望大学に受からせることだけだ」
6:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 22:01:23.094 :GPM9aQXT0.net
同僚「……おい、また授業中にホームレスを反面教師に使ったんだって?」
講師「それがなにか?」
同僚「いい加減にしろよ。今に問題になるぞ」
講師「問題? 問題どころか俺は成果を上げてるつもりだがな」
講師「現に俺が受け持った生徒は、大手予備校の模試でも上位を取ってる。第一志望合格まっしぐらだ」
同僚「そうじゃなくて、もしホームレスを見下すような大人になったら……」
講師「そんなことは俺の知ったことじゃない。親や学校の仕事だろ」
講師「俺たちがやるべきことは、生徒をしっかり勉強させ、志望大に受からせることだ。違うか?」
講師「そのためなら、ホームレスだろうがなんだろうが利用してやるよ」
同僚「くっ……!」
7:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 22:03:17.998 :9mo3YtI60.net
殺せ!
8:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 22:03:27.986 :GPM9aQXT0.net
同僚「まるで志望大学受からせるマシーンだ……。人間性ってもんがないのか……」
ヒソヒソ… ヒソヒソ…
講師(……なんとでもいえ。無能ども)
講師(なんといわれようと、俺は俺のやり方を貫くだけだ)
9:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 22:07:17.224 :GPM9aQXT0.net
― 予備校 ―
講師「では、今日の授業はここまで! しっかり復習してくるように!」
ワイワイ… ガヤガヤ…
眼鏡「…………」
講師(このクラスも……たるみが出てくる頃だな。緊張感がなくなってきてる)
講師(そろそろいつものアレをやるか)
11:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 22:10:16.424 :GPM9aQXT0.net
― 段ボールハウス ―
講師「よう」
ホームレス「おお、お前さんか」
講師「今夜、また頼むよ。俺の授業に顔出してくれ」
ホームレス「ほいよ!」
ホームレス「酒臭い方が説得力増すよな? ってわけで飲んでいくわ」グビグビ
講師「ごもっとも」
12:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 22:13:44.061 :GPM9aQXT0.net
― 予備校 ―
講師「いいか、みんな! 勉強しないとこのホームレスみたいになっちまうぞ!」
ホームレス「ウ~イ……」ヒック
講師「なりたくなかったら、しっかり勉強して第一志望に入るんだ!」
ザワザワ…
講師(よし……今日も上手くいった。みんな勉強しなきゃってツラになってやがる)
眼鏡「…………」
ホームレス(……む)
13:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 22:17:28.108 :GPM9aQXT0.net
講師「今日も助かったよ。こりゃ今度の全国模試も期待できる」
ホームレス「……あのさ」
講師「ん?」
ホームレス「教室の隅に座ってた眼鏡かけた生徒いただろ」
講師「ああ、あいつか。あいつは成績優秀だから、きっといい大学入れるだろ」
ホームレス「彼……いじめを受けてるぞ。おそらく自分の通ってる高校で」
講師「へ?」
ホームレス「なんとか助けてやれないもんかな。お前さんの手で」
ホームレス「いや……助けなくてもいい。あの子を励ましてやってくれよ」
講師「何を言い出すんだ、いきなり!」
15:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 22:21:25.319 :GPM9aQXT0.net
講師「いじめを受けてるかどうかも分からないのに、励ますなんてできるかよ!」
ホームレス「いや……俺には分かるんだよ」
講師「なんで分かるんだよ! エスパーかなんかかお前は!」
ホームレス「とにかく……俺には分かるんだ」
講師「なんだそりゃ……! 百歩譲って分かるのはいいとして、なんで俺がやんなきゃならない?」
講師「気づいたあんたがやりゃいいだろうが!」
ホームレス「こんな汚いおっさんの励ましなんて、心に響くわけないだろ?」
ホームレス「だが、お前さんは違う。この予備校の人気講師で、みんなから一目置かれている」
ホームレス「そんな人の言葉なら、ずいぶん変わってくるもんさ」
講師「だからってなんで俺が……!」
16:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 22:25:25.387 :GPM9aQXT0.net
ホームレス「それに――」
講師「?」
ホームレス「もしかすると、今のままじゃあの子の成績……落ちるかもしれないぞ?」
講師「!」
ホームレス「杞憂で元々、ちょっと励ますだけで勉強に身が入るなら、儲けもんだろ?」
ホームレス「どんな手段を使っても生徒を志望大学に受からせるんじゃなかったのか?」
講師「……ちっ」
ホームレス「ま、気が向いたら頼むよ」
講師「誰がホームレスのいうことなんか……!」
17:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 22:28:44.560 :GPM9aQXT0.net
― 予備校 ―
カリカリ… カリカリ…
講師「ここは色んな大学の入試で出るから、特に重要だ。絶対に落とさないように――」
講師「…………」チラッ
眼鏡「…………」
講師(たしかに元気がない……)
18:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 22:31:04.824 :GPM9aQXT0.net
授業後――
講師「君、ちょっといいかな」
眼鏡「なんでしょう?」
講師「あっちの自習室……今誰もいないし、マンツーマンで話をしたい」
眼鏡「は、はい……」
講師(こんなことして何もなかったら、とんだお笑いだ……)
19:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 22:34:09.293 :GPM9aQXT0.net
講師「突然なんだが……君、学校でいじめられたりしてないか?」
眼鏡「!」
講師「……どうかな?」
眼鏡「なぜそれを……!」
講師(当たってた! あのおっさん、節穴でもなかったみたいだな……)
講師「なぜ分かったかというと、なんとなくなんだけど……元気なさそうだったし……」
21:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 22:39:02.546 :GPM9aQXT0.net
講師「結論からいおう」
講師「俺には君のいじめを解決することはできない」
講師「なぜなら、俺は勉強教えるしか能がないし、仮に俺がいじめをやってる連中を注意したところで」
講師「どうなるもんでもないと思うからだ。悪化させてしまうかもしれない」
眼鏡「…………」
講師「だが、俺は予備校の講師としてならいくらでも力になれる!」
眼鏡「!」
講師「学校なんざ行かずとも大学入る方法は知ってるし、そういう知り合いだっている」
講師「君が望むなら、もっと特別な形で勉強を教えてもいい」
講師「だからいじめを苦にしてバカな真似だけはするな!」
講師「俺は君が志望大学に行くためなら、全力を尽くすつもりだ!」
講師(こんなことしかいえない自分が情けない……)
22:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 22:42:17.740 :GPM9aQXT0.net
眼鏡「……ありがとうございます!」
講師「へ?」
講師「いやしかし、なんの解決にもなってないアドバイスなのに……」
眼鏡「気づいてくれただけで、味方がいるって分かっただけで……だいぶ楽になれました」
眼鏡「先生ってもっと怖い人かと思ってましたけど、そんなことなかったんですね」
眼鏡「なにかあったら、相談させてもらうのでよろしくお願いします!」
講師「ああ、勉強頑張れよ!」
講師(こんなんで……よかったのかな?)
23:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 22:45:17.715 :GPM9aQXT0.net
― 段ボールハウス ―
講師「よっ」
ホームレス「お前さんかい」
ホームレス「この前はすまなかったな。つい熱くなって、変なことを……」
講師「いや……あれから俺、眼鏡の彼に話しかけてみたんだ」
ホームレス「えっ?」
講師「そしたら、本当にいじめにあってて……俺とちょっと話しただけでだいぶ楽になったっていってた」
講師「こんなんでよかったのかな」
ホームレス「それでいいのさ」
24:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 22:48:31.369 :GPM9aQXT0.net
ホームレス「いじめを受けてる子ってのは孤独だ。四面楚歌で、味方がいない」
ホームレス「だから……時として残る逃げ道である“自殺”っていう最悪の道に走ってしまう」
ホームレス「だけどほんの一人でも、自分のことを気にかけてくれる味方がいれば――」
ホームレス「ずいぶん心は楽になるってもんなのさ」
講師「そういうものかな。俺にはよく分からんが」
講師「まあこれで、彼が受験勉強に集中してくれるなら安いもんだ」
ホームレス「相変わらずだな、お前さんは」
講師「俺はあくまで予備校講師だからな」
25:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 22:51:30.501 :GPM9aQXT0.net
講師「だけど、あんたの正体ははっきりさせておきたい」
講師「なぜ、あんたは彼がいじめられてるって分かったんだ? エスパーだとは言わせないぞ」
ホームレス「ふふ……それはねえ」
ホームレス「俺は……“元教師”だからさ」
講師「!」
ホームレス「これでもドラマに出てくるような人気教師だったんだぜ」
講師「そうか、だから……」
講師「だけど、なんでそんな人気教師がホームレスに……?」
ホームレス「…………」
27:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 22:54:37.365 :GPM9aQXT0.net
ホームレス「……死なせた」
講師「え?」
ホームレス「死なせちまったのさ……」
講師「受け持ってた生徒さんをか? だから眼鏡の彼には同じことをさせまいと――」
ホームレス「…………」
講師「いや、よそう。すまなかったな、過去をほじくるようなことして」
講師「これからもよろしく頼むよ」
ホームレス「ああ、俺はいつでもお前さんの力になるぜえ」
28:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 22:58:04.079 :GPM9aQXT0.net
― 予備校 ―
講師「いいか! このホームレスみたいになりたくなきゃ、しっかり勉強しろ!」
ホームレス「ただし、気楽なのは確かだからな。一度なってみるのもいいさ」
ホームレス「ま、病気になったら終わりだしなぁ、保険証もなんもないし」
アハハハハ… ワイワイ…
講師(呼びすぎてちょっと名物みたいになってきちゃったな……)
29:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 23:00:19.617 :GPM9aQXT0.net
JK「…………」サッサッ
講師「そこ! 授業中に化粧なんかするんじゃない!」
JK「はぁ~い」
講師「まったく……」
ホームレス「あの子……」ボソッ
講師「ん?」
ホームレス「今日はずいぶん派手だ。授業の後、ちょっとつけた方がいいんじゃないか?」
講師「またあんたの勘か」
ホームレス「経験に基づいた、な」
31:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 23:03:40.689 :GPM9aQXT0.net
授業後――
スタスタ…
講師「スマホいじりながら、どんどん繁華街の方に向かっていくな」
講師「デートか? ったく恋愛もいいが、できれば受験終わった後に……」
ホームレス「いや、これはきっと……」
JK「…………」スタスタ
33:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 23:06:22.707 :GPM9aQXT0.net
中年「やぁ、待った?」
JK「いえ、今来たところです」
中年「じゃあ行こうか……」
講師「なにい!?」
ホームレス「やっぱりなぁ……」
講師「もしかして、もう深い関係になってるんじゃ……」
ホームレス「いや、きっとまだ初めてだろうな。女の子に緊張が見られる」
講師「ちっ、世話の焼ける!」
34:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 23:09:31.542 :GPM9aQXT0.net
講師「ちょーっと待って下さい」
中年「ん?」
JK「あ、先生……! なんでここに……!?」
講師「その子、見ての通りまだ高校生なんでね。そういうことはしないで欲しいんです」
中年「なんだお前は!? 関係ないだろ!」
ホームレス「うへへへへ……」
中年「ひっ!?」
ホームレス「女子高生のソックスもいいが、俺の靴下はどうだい? 一週間は洗ってないけど」ムワァァァァ
中年「オエッ……」
中年「ひいいいいいいっ!」タタタタタッ
ホームレス「おっと一ヶ月は洗ってなかったか」
35:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 23:11:44.984 :n/G2Y2xKr.net
ソックスでセックス阻止ってか
36:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 23:14:09.493 :GPM9aQXT0.net
JK「なんで余計なことしたのよ! 親でも教師でもないくせに!」
JK「私が大人相手に何しようが勝手じゃん!」
講師「ああ勝手だ。だが、俺は予備校講師として君を志望大に受からせる義務がある」
講師「大事な時期に、あんなおっさんとの付き合いに時間を取られちゃ困るんだよ」
講師「志望大に受かったら援助交際でもパパ活でもなんでもやればいい。分かったな?」
ホームレス(なんつう説得の仕方だ)
JK「うん……分かった」
講師「よし。なら、帰って今日の授業を復習して、さっさと寝ろ。睡眠不足は受験の大敵だからな」
37:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 23:17:01.808 :GPM9aQXT0.net
JK「先生……」
講師「ん?」
JK「みんなやってるからって私もやろうとしたけど……本当は怖かったの。ありがとう」
講師「今度の模試、いい点取って返してくれ」
JK「うん!」
ホームレス「お前さんはとことん予備校講師だねえ」
講師「当然だろ」
39:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 23:20:05.204 :GPM9aQXT0.net
……
― 予備校の外 ―
茶髪「ふぅ~、やっと終わったぜ」
茶髪「どれ勉強後の一服、っと……」シュボッ
講師「コラ、タバコなんか吸うんじゃない! まだ未成年だろう!」
茶髪「!」
41:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 23:23:21.874 :GPM9aQXT0.net
茶髪「うるっせーな、あんたは教師じゃなくて予備校の講師だろ? ほっといてくれよ」
講師「そうはいかない」
講師「タバコのせいで脳の働きが悪くなって、受験に失敗されたら困るからな」
講師「吸うなら大学入ってから吸え。十本でも百本でも千本でも」
茶髪「タバコぐれえで受験に失敗するわけが……」
講師「それにな……」
講師「あまり若いうちからタバコ吸ってると、こうなるぞ」
ホームレス「うへへへ……」
茶髪「わっ、ホームレスのおっさんじゃねえか!」
42:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 23:26:17.281 :GPM9aQXT0.net
ホームレス「ゲボォォォォォォ!!!」
茶髪「ゲ!?」
講師「どうやら肺に穴が開いたらしい。もう長くないな」
ホームレス「ゲボォォォォォォォォォ!!!」
講師「どうする?」
茶髪「や、やめる! やめます! タバコやめます!」
講師「やったな!」
ホームレス「ああ、こんだけ脅しとけばタバコやめるだろ」
講師「さて、ケチャップを掃除するか……」
ホームレス「うん……」
43:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 23:30:18.014 :GPM9aQXT0.net
― 予備校 ―
ワイワイ…
講師「じゃ、授業を始めるぞー」
ピタッ
講師「……ん?」
講師「今日はいつもより出席人数が少ないな」
講師「……まぁいい。テキストの38ページから……」
44:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 23:32:24.388 :GPM9aQXT0.net
別の日――
― 予備校 ―
講師「今日も少ないな……」
講師「まあ、仕方ない……。まずは……」
講師(一体どうしたっていうんだ?)
45:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 23:35:54.012 :GPM9aQXT0.net
同僚「ああ、俺の受け持ちも出席率が悪くなってるな」
講師「やっぱり俺だけじゃないのか……」
講師「仮に予備校通うよりもっといい勉強法が見つかったってんなら、一向にかまわないが」
講師「単なるサボりだとしたら……」
同僚「授業料はもう貰ってんだし、あとサボるかどうかはもはや本人の問題だろ?」
同僚「サボる奴は何したってサボる。こっちが積極的にどうこうすることじゃねえよ」
講師「そういうわけにはいかないだろ! 俺たちには生徒を志望大に受からせる義務がある!」
講師「何とかしなきゃ……」ガタッ
スタスタ…
同僚「へえ、あいつにもあんな一面があったなんてな」
46:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 23:38:43.045 :GPM9aQXT0.net
― 段ボールハウス ―
講師「……というわけなんだ」
講師「どうやらこの現象、うちの予備校以外でも起こってるみたいで」
講師「連絡できる家にはしてみたり、色々調べたんだけど、どうもはっきりした原因が分からなくて」
ホームレス「ふうむ、集団予備校サボり事件ってとこか」
講師「もし、何か心当たりがあったら、教えてもらえないか?」
ホームレス「分かった、ホームレス仲間にも頼んで探ってみる」
ホームレス「俺たちはこの町の裏事情に関しちゃ、警察よりも詳しいからよ!」
講師「頼む!」
48:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 23:41:10.872 :GPM9aQXT0.net
三日後――
講師(今日も出席率はイマイチだった……)
ホームレス「お待たせ」
講師「あっ……どうだった?」
ホームレス「話は見えてきた。ここじゃなんだし、公園のベンチで話そうや」
講師「だったら缶コーヒーでも飲みながら話そう。買ってくるよ」
ホームレス「お、わりぃな!」
49:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 23:44:24.280 :GPM9aQXT0.net
― 公園 ―
講師「……楽に志望大学に入れる会?」
ホームレス「ああ、“入会すれば勉強しなくても志望大に行ける!”なぁんて謳ってるんだと」
ホームレス「そんなのがここらにできて、受験に不安を抱える高校生をだまくらかしてるって噂だ」
ホームレス「会の連中がどこにいるとか、そこまでは分からなかったが……」
ホームレス「入会した連中もきっと巧妙に口止めされてるんじゃねえか」
ホームレス「会のことが大っぴらになったらこの話がなくなる、とか……」
講師「…………」
50:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 23:47:33.048 :GPM9aQXT0.net
講師「ふざけるなッ!!!」ガンッ
ホームレス「!」ビクッ
講師「勉強しなくても志望大学に入れるだぁ~? 本当だとしても、どうせまともな方法じゃないんだろ?」
講師「それってようするに、お前じゃまともにやっても受からないっていってるようなもんじゃねえか」
講師「ふざけんじゃねえッ!!!」
講師「誰がそんなバカな会を作りやがったんだァァァッ!!!」
講師「はぁ、はぁ、はぁ……」
ヒソヒソ… ヒソヒソ…
講師「……あ」
ホームレス「…………」
51:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 23:50:48.365 :GPM9aQXT0.net
講師「ごめん、つい声を荒げた……」
ホームレス「いや……」
講師「ちょっと……話をしたくなった。聞いてもらえるかな」
ホームレス「こちとらホームレス、暇ならいくらでもあるぜ」
講師「俺はかつて、今勤めてるとことはまた別の予備校に勤めてた」
講師「そこは一人の講師が授業の他に、何人か個別に受験について面倒見るシステムになってて」
講師「俺はある女の子を受け持ってた……」
ホームレス「…………」
53:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 23:53:40.343 :GPM9aQXT0.net
講師「その女の子の第一志望はA大学、第二志望にしてたのはB大学だった」
講師「ただ、俺の目から見て、彼女がA大に受かる確率は五分五分というところだった」
講師「ある日、進路についての面談で彼女は――」
女生徒『やはりA大学に絞って勉強を進めたいと思ってます!』
講師「だが、俺はそれに反対だった」
講師「A大とB大じゃ試験の傾向が違いすぎたし、俺もできれば現役で受からせてやりたいって思いがあった」
講師「それに彼女がB大に現役合格できれば、俺の評価も上がるという欲もあった」
講師「B大も十分レベルの高い大学だったからな」
講師「だから……」
講師『危険は冒さない方がいい。五分五分のA大より、B大にすべきだ』
54:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 23:56:19.642 :GPM9aQXT0.net
講師「それからだ。彼女が狂ったように常軌を逸した猛勉強を始めたのは」
講師「俺の言葉が引き金になったのは明らかだった」
講師「あんたも元教師なら、ただガムシャラなだけの勉強じゃ体壊すだけで逆効果だってのは分かるだろう。そして――」
講師「彼女は死んだ。傍から見ると、あまりにもつまらない事故で」
ホームレス「…………」
講師「誰も俺を責めなかった。責めてくれなかった」
講師「予備校は当然として、ご両親にも会いに行ったが、娘さんの死をきっかけに離婚してて会えずじまい」
講師「結局俺はその予備校を辞め……今に至っている」
講師「そして、今でも思うんだ」
55:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/30(水) 23:59:33.590 :GPM9aQXT0.net
講師「もし、あの時俺が……A大を受けよう、俺が第一志望に受からせる、と言い切ることができてたなら」
講師「彼女は……死なずに済んだんじゃないかって。たとえA大に受からなかったとしても」
講師「受験ってのは、大人になってから振り返れば人生の一通過点に過ぎないけど」
講師「当人にとっては人生の全てを賭けた一大イベントなんだ……」
講師「それこそ、気に病んだり、志望大に落ちて死を選んでしまう子も出るような……」
講師「俺はしょせん、彼女の親身になってあげられてなかったんだ……」
ホームレス「だから今のお前さんは……志望大学に絶対受からせるという講師になったわけだ」
講師「……そうだ」
56:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/31(木) 00:02:50.862 :djd9lzCm0HLWN.net
ホームレス「そんなお前さんなら許せるわけがないよな……こんな会」
講師「受験生を舐めてる……許せるわけがない」
ホームレス「よし決まりだ! お前さんのポリシーのためにも、亡くなったその子のためにも」
ホームレス「楽に志望大学に入れる会とやらをブッ潰そう!」
講師「ああ!」
57:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/31(木) 00:05:21.298 :djd9lzCm0HLWN.net
― 予備校 ―
講師(引き続き、ホームレスのおっさんには調査してもらってるがあまり進展はない……)
講師(あの格好で繁華街うろついてると、職質食らったりして苦労してるみたいだ)
講師(なにかいい方法は……)
眼鏡「先生」
講師「ん?」
眼鏡「ボーっとして、どうかしたんですか?」
講師「あ、いや……」
眼鏡「あれから僕、どうにかいじめに立ち向かってるんです。これも先生のおかげです」
眼鏡「先生も何かあるなら、僕に相談して下さい!」
講師「う、うーん……実は……」
59:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/31(木) 00:08:05.518 :djd9lzCm0HLWN.net
眼鏡「そんな会が……?」
講師「ああ、まあ君みたいな順調に成績伸ばしてる子には無縁な会だ」
講師「おそらく、受験勉強に悩んでる子をターゲットにして声をかけてるんだろうが……」
眼鏡「だったらその役を僕がやりますよ!」
講師「え!?」
眼鏡「受験について悩むふりをして、この近辺をうろつけばいいんですよね?」
講師「バ、バカいえ……生徒にそんなこと――」
JK「あ、私もやりたーい!」
講師「な!?」
60:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/31(木) 00:11:36.099 :djd9lzCm0HLWN.net
講師「なにいってんだ、二人とも! 勉強があるだろうが!」
講師「それにもしものことがあったらどうする! 危険すぎる!」
JK「だけど先生、今のままじゃ八方ふさがりでしょ?」
眼鏡「そうですよ。それにこの件をどうにかしないと、先生も授業に集中できないでしょう?」
眼鏡「そしたら困るのは僕達ですから。集中に欠けた授業なんて聞きたくもないですし」
講師「ぐ……!(言い返せない)」
講師「分かった……では勉強に支障がでない程度に協力をお願いする。よろしく頼む」
眼鏡「はいっ!」
JK「あ、茶髪君もやりたいって!」
茶髪「なんで!?」
JK「興味ありそうに、聞き耳立ててたじゃん」
茶髪「うぐぐ……分かったよ、俺もやるよ」
63:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/31(木) 00:15:15.491 :djd9lzCm0HLWN.net
そして――
眼鏡「あぁ~! またD判定だ! こんなんじゃ志望大に受かりっこない!」
眼鏡「くそっ! くそっ! くそっ!」グシャグシャッ
眼鏡(……って、ちょっとオーバーだったかな?)
眼鏡「ふぅ~……今日は帰るか」
白スーツ「君」スッ
眼鏡「なんですか?」
白スーツ「受験勉強……大変そうだね。よかったら耳よりの話があるんだけど……」
眼鏡(まさか、こいつが“会”の……!?)
64:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/31(木) 00:18:35.196 :djd9lzCm0HLWN.net
他の二人も――
JK「あーあ、もう勉強なんかやってらんない!」
グラサン「Yo! Yo! 君、ちょっと俺っちの愉快なハナシ聞く気なぁ~い?」
JK「?」
グラサン「受験勉強なんかしなくてもいいっつー最高にハッピーな話なんだけどさ!」
茶髪「誰だよあんた?」
中年女「あなた、勉強嫌いそうね。ものすごく大きい独り言だったもの」
茶髪「嫌いどころか大嫌いだよ!」
中年女「だけどそんなあなたでも、一流大学に入れる方法があるのよぉ~」
66:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/31(木) 00:22:02.938 :djd9lzCm0HLWN.net
……
― カフェ ―
眼鏡「……というわけです」
講師「で、怪しいビルに案内されたと?」
眼鏡「そうなんです」
JK「そしたら後はすごかったわよ~」
JK「会の会長とかいう奴が、私たちに向けてペラペラ喋りまくり!」
茶髪「受験勉強なんか下らんとか、こんな制度で君たちの実力は測れない、青春の無駄遣い、とか」
茶髪「ほとんど高校生だったけど、中には浪人生ぽい奴も混ざってたぜ」
眼鏡「オトリで行ったにもかかわらず、ちょっと惹かれちゃうぐらいでしたね」
JK「うん、もし悩んでる時にあんなに“勉強する必要ない!”って言われたら引っかかっちゃうかも」
講師「…………」
67:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/31(木) 00:24:08.872 :djd9lzCm0HLWN.net
講師「三人とも、ありがとう。この礼は必ずする」
眼鏡「あの、これからどうするつもりですか? よかったら僕たちも……」
講師「いや……これ以上はダメだ。三人とも勉強に専念しろ」
眼鏡「う……」
JK「分かったわよ……」
茶髪「しゃあねえか」
講師「ここからは……俺“たち”の仕事だ」
眼鏡「分かりました。先生こそ、どうか無茶しないように!」
69:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/31(木) 00:27:40.056 :djd9lzCm0HLWN.net
― 段ボールハウス ―
ホームレス「あの子たち、よくやってくれたじゃねえか」
講師「ああ、本当に感謝してる」
ホームレス「で、どうすんだそいつら? 警察に垂れこむのか?」
講師「いきなり警察がどかどか介入する事態になったら、大騒ぎになって受験生にも傷が残る」
講師「それになにより、俺の気が済まない」
ホームレス「ってことは……」
講師「乗り込む!」
ホームレス「へへ、そうこなくっちゃな。で、いつやる?」
講師「今だろ!!!」
71:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/31(木) 00:31:13.754 :djd9lzCm0HLWN.net
― ビル ―
ホームレス「ぱっと見、なんてことのないビルだな」
ホームレス「ここに夜な夜な、受験に不安を抱える受験生が集められてるわけか……」
ホームレス「で、言葉巧みに洗脳みたいなことを……」
講師「行くぞ」
ホームレス「おう!」
72:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/31(木) 00:34:24.023 :djd9lzCm0HLWN.net
会長「受験勉強なんてはっきりいって時間の無駄! ナンセンス!」
会長「あんなペーパーテストで一体何が測れると思いますか?」
会長「微分積分ができたところで、古い歴史を覚えたところで、いったいなんの役に立つんです?」
会長「生きていく上で、知識なんて一般常識があれば十分なんです! 分かりますか、皆さん?」
「はいっ!」 「はいっ!」 「はいっ!」
会長「しかし、今の世の中、いい大学に行かねばなかなか優良な進路にありつけないのは事実」
会長「そこは認めなければなりません。綺麗事ばかりいう私ではございません」
会長「ですが、いい大学に行くためにわざわざ猛勉強するなど愚か者のやること!」
会長「各大学に強力なコネクションを持つ私が、あなたがたを必ず入学させてみせます!」
73:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/31(木) 00:38:07.550 :djd9lzCm0HLWN.net
会長「ただし、これには多少のお金が必要になります。仕方ないことです」
会長「一人頭10万、君たちぐらいの年齢ならなんとかこっそり用意できる額でしょう」
会長「これをきっちり用意して頂ければ、必ずやどんな大学にも合格させてみせます!」
会長「払った日からは遊び放題! 豊かな青春時代を築けるのです!」
会長「青春を大いに楽しんで、立派な社会人になりましょう!」
「よ、よし……!」
「親の財布からなんとか……」
「貯金全部おろせば……」
講師「――なぁんて話があると思うか?」
74:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/31(木) 00:41:41.826 :djd9lzCm0HLWN.net
ザワザワ…
会長「だ、誰だ、君は?」
講師「ちょっと失礼、特別授業を始めさせてもらう」ズカズカ
会長「お、おいっ!」
「誰だあれ?」 「あっ、俺が通ってた予備校の……!」 「何するつもりだ?」
講師「ここに集まってるのはだいたいが高校生、浪人生も中にはいると聞く」
講師「多分みんな……受験勉強が嫌になって、こんなところに来ちゃったんだと思う」
会長「おいっ! こんなところとは失敬だぞ!」
講師「だが、聞いてくれ」
ザワザワ…
76:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/31(木) 00:45:33.698 :djd9lzCm0HLWN.net
講師「たしかに受験勉強ってのは大変だ」
講師「どんなに頑張ったって当日体調崩して、全てがパーになることだってある」
講師「もしもっとちゃんと人の力を測れるシステムがあるなら、そっちにした方がいいと思うくらいだ」
講師「だが、俺は受験勉強が無駄だとは思わない」
講師「机に向かい、ひたすらに暗記し、試験の傾向を研究し、悩み苦しみ、一つの目的にまい進する」
講師「これらがなんの糧にもならないなんて絶対思わない」
講師「それに、仮にこいつのいうことが本当だったとして、こいつに10万払って楽にいい大学入って」
講師「君たちは何を得られる?」
講師「学歴か? そうじゃない。やましい手段で入学しましたって事実だけだ」
講師「それはきっといつまでもいつまでも君たちの心の中に残り、君らを苦しめる」
講師「フェアに戦えば必ず幸せになれるほど人生は甘くないが」
講師「汚い手を使った奴はやっぱりどこかしらで不幸を背負う、これが俺の持論だ」
77:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/31(木) 00:46:19.925 :FGVzh+DvrHLWN.net
熱いな
78:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/31(木) 00:48:15.622 :djd9lzCm0HLWN.net
講師「みんな、どうか目を覚まして欲しい」
講師「こんな奴の口車に乗せられず、ちゃんと現実を見て欲しい」
講師「俺はこれでも予備校講師だ。勉強に関してならいつでも相談に乗れる」
講師「ここに番号も書いといてやる。イタ電上等」カリカリッ
講師「だから……頼む!」
講師「受験から……逃げないでくれ。どうか最後まで自分の力で戦って欲しい!」
シーン…
79:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/31(木) 00:51:25.649 :djd9lzCm0HLWN.net
会長「さっきから聞いてれば、好き勝手いいやがって……人を詐欺師みてえに……」ガシッ
講師「!」
会長「おいみんな! こんな奴のいうことは無視しろ!」
会長「私のいうこと聞いて、10万払やいいんだよ! 分かってんだろ!? 楽したいだろ!?」
会長「お前らあんなに勉強したくねえ受験したくねえって言ってたじゃねえか!」
シーン…
会長「くっ……!」
会長「せっかく……せっかく、何度もこんな会を開いて、ようやく金巻き上げられるとこまで来たのに」
会長「おい、お前ら出てこい! こいつ叩きのめすぞ!」
「へっへっへ……」ムワァァァァァ
会長「うっ!?」
81:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/31(木) 00:55:05.901 :djd9lzCm0HLWN.net
ホームレス「お仲間はみんな逃げちまったぜ」ムワァァァァァ
会長「なんだお前!?」
ホームレス「通りすがりの……ホームレスってとこかな。うへへへへ……」
会長「えええ……!?」
ホームレス「脱ぎたての靴下……嗅ぐ? 一ヶ月は洗ってねえけど」ムワァ…
会長「うわっ、くっさ!」
ホームレス「ほれプレゼント」パサッ
会長「オエエエエエエエエエエエッ!!!」
ホームレス「おっと、三ヶ月だったっけ」
82:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/31(木) 00:58:21.885 :djd9lzCm0HLWN.net
ホームレス「受験生のみんな、楽することなんか考えてねえでちゃんと勉強しねえと……」
ホームレス「俺みたいになっちゃうぞぉ~?」
「よ、予備校行きます!」 「目が覚めました!」 「赤本買いに行こっと!」
バタバタバタ… ドタバタドタバタ…
シーン…
講師「さっすが……一瞬で目を覚まさせた」
ホームレス「いやいや、お前さんの特別授業もなかなか熱かったぜ」
講師「やめてくれ、恥ずかしい」
83:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/31(木) 01:01:42.720 :djd9lzCm0HLWN.net
……
― 段ボールハウス ―
ホームレス「やっぱりあいつらは詐欺師だったみてえだ」
ホームレス「受験生騙して、小金をむしり取ろうって算段だったらしい」
講師「そりゃそうだ。あんな上手い話あるわけない」
ホームレス「だけどコロッと騙されちまう。あいつら図体はでかいが、中身はまだまだ子供ってことだな」
ホームレス「これでお前さんも少しは気が楽になったんじゃないか?」
講師「いや、まだまだ……亡くなったあの子への償いは終わらないよ」
85:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/31(木) 01:05:04.368 :djd9lzCm0HLWN.net
ホームレス「もう……いいんだ」
講師「?」
ホームレス「あの子はお前さんを恨んじゃいない」
ホームレス「自分の意志で勉強して、死んだんだ。お前さんが背負うことじゃない」
講師「なにいってんだ、突然?」
ホームレス「俺はお前さんの教え子だった子を知ってる」
講師「は? 知ってるってどういう……」
ホームレス「俺はあの子の父親だ」
講師「…………!」
86:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/31(木) 01:08:41.780 :6TKtgAJM0HLWN.net
…………………!!!
87:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/31(木) 01:09:32.183 :djd9lzCm0HLWN.net
ホームレス「人気教師だった俺は、灯台下暗し、実の我が子のことなんかちっとも見ちゃいなかった」
ホームレス「妻から“最近あの子が勉強しすぎなの”と相談されても耳も貸さなかった」
ホームレス「まともに顔を見たのは、それこそあの子が死んでからだった」
ホームレス「遺体を見た時、“こんなに大きくなってたんだ”って思ってしまったくらいだ」
ホームレス「あの子を死なせたのは……俺なんだ」
ホームレス「妻から愛想尽かされて、ここまで落ちぶれるのも当然の、最低の男だ……」
講師「もしかして、俺と出会ったのも偶然じゃ……」
ホームレス「ああ、偶然じゃない」
ホームレス「娘の日記には『予備校の○○先生にA大は難しいと言われたから頑張らなきゃ』と書かれてた」
ホームレス「娘を猛勉強させたきっかけが、お前さんだってことは知ってた」
89:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/31(木) 01:12:30.590 :djd9lzCm0HLWN.net
講師「それで、俺に復讐するために――」
ホームレス「そういう念がなかったとはいえねえが、とにかく俺はお前さんという人間を見たかった」
ホームレス「それで下らない人間だと思ったら、もしかしたら俺の逆恨みに火がついたかもしれねえ」
ホームレス「だが、俺が見たお前さんは……もがき苦しんでた」
ホームレス「志望大学に絶対受からせてやるっていう、鬼講師と化してた」
ホームレス「娘のことが原因だってのは明らかだった」
ホームレス「だから俺は……何とかしてお前さんの力になってやりたいと思ったんだ……」
講師「くっ……!」
92:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/31(木) 01:15:34.020 :djd9lzCm0HLWN.net
ホームレス「もう……十分だ」
ホームレス「娘のために君がこれ以上苦しむことはない。娘も天国で悲しむ」
ホームレス「ありがとう……」
講師「……はい……!」
…………
……
93:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/31(木) 01:19:13.446 :djd9lzCm0HLWN.net
― 予備校 ―
ワイワイ… ガヤガヤ…
講師「いよいよ本格的に受験シーズンだ! フンドシ締めて勉強しろ!」
講師「ただし無茶な勉強は絶対しないように! 睡眠時間削ったってパフォーマンスが落ちるだけだ!」
眼鏡「はいっ!」
JK「はーい!」
茶髪「おっす!」
講師「よし、みんないい返事だ! じゃあ今日はテキストの……」
94:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/31(木) 01:21:16.416 :djd9lzCm0HLWN.net
……
― 墓地 ―
講師「……ありがとうございます、お墓参りをさせてくれて」
ホームレス「いや、こっちこそありがとう」
講師「ところで俺、今資金を貯めてて、いずれ独立して塾をやろうかなって考えてるんです」
ホームレス「ほう、いいじゃないか」
講師「そしたら……俺を手伝ってくれませんか?」
講師「名教師だったあなたの力を……ぜひお借りしたい」
ホームレス「…………」
95:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/31(木) 01:24:25.463 :djd9lzCm0HLWN.net
ホームレス「すぐに返事はできない。考えさせてもらうよ」
講師「よろしくお願いします」
ホームレス「だが、もし俺がお前さんの塾に入ったら……そうだなあ」
講師「?」
ホームレス「この講師みたいになりたかったらしっかり勉強するんだぞ、と生徒に言ってやろうかな」ニヤッ
講師「や、やめて下さいよ!」
ハッハッハ……
― おわり ―
98:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/10/31(木) 01:32:27.376 :FGVzh+DvrHLWN.net
乙
講師とホームレスいいコンビだった
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